夢と台風

141012

明け方、せつない夢で目がさめた。小さな男の子は父親の家にいて傍らにいない。昨夜はバーで仲良しの女の子と久々の再会を果たした。はしゃぎながらカンパリソーダとジャックダニエルのロックをあけて帰った。そういう朝にかぎって、胸が苦しくなる夢を見る。バーで話題にした人が出てきた。リアルでの会話で消化不良を起こし、それが夢につながったようだ。現実と夢でバランスをとっている。

うつろな気分で部屋を片付け、洗濯をし、昨夜から残っていた洗い物をした。眩しすぎる陽光に顔をそむけながら寺町通りのグランディールに徒歩で行ってベーグルを買った。帰ってコーヒーをたっぷりいれて遅めの朝食をとった。時間というものは、こちらが淡々としていれば、なんとかやり過ごせるものだ。

ベーグルをかじりながら、録画していた日曜美術館を観た。新しい日本画を追求した菱田春草の生涯と作品。才能と新しさを後押しした岡倉天心の凄さ。春草は、時代時代で変化する日本人の美意識に呼応するかのように、伝統的な日本画の手法にとらわれず新しい技術で表現しようとした。いかに彼が革新的であったかを熱心に説いた解説にも感心したが、何より春草その人の絵の美しさが本物だった。真っ直ぐに染み込んできた。晩年に目を患ってから描いたという林と落ち葉の絵が良かった。心の濁りが純化していくのを感じた。

精神の低下を自分一人の力で何とかしようとしても難しい。時間と、外部からの刺激によって、何となくコンディションは上がっていく。人の力を借りるのはハイリスクハイリターン。他人の力を借りなければ、時間はかかるがリスクは少ない。緩やかな回復を期待できる。スマホばかりのぞいてSNSやニュースサイトを眺めているだけではらちがあかない。世界を切り替える必要がある。今回は、美味しいベーグルとコーヒーと菱田春草に助けられた。

午後、部屋をうろうろしているとき、10月8日はしなもんの誕生日だったことを思い出した。皆既月食の日だ。しなもんの魂も夜空に浮かんでいただろうか。

台風が四国にまでせまっているらしい。

明日、予定していた知人宅での秋の集いは中止になった。実家から呼ばれているので、クルマで帰省しようかと思っている。ふと「高速道路は台風で通行止めになるのだろうか」と疑問がよぎり、クルマ好きの男の子に質問したら、よほどのことがないかぎり速度規制程度で通行止めにはならないだろう、とのこと。ハイドロプレーンに注意、との助言をもらった。

テーブルにはアマゾンマーケットプレイスで買った『茨木のり子集 言の葉』1〜3が置いてある。今日届いた。シンプルな装丁がとても美しい。誰かがつけた染み、まるまって黒ずんだケースの角、しっとりとした表紙の手触り、どれも愛おしい。私もいつか詩集か散文集を出したいな。10部でいいから、真っ白の装丁で真っ白のページに美しい明朝体で私の言葉たちが綴られている本を。ゆきちゃんに話したら、「和綴じで本に仕立ててあげる」と言ってくれた。私が死んでも、ゆきちゃんが綴じた紙の束と言葉たちが誰かの手元に残ればいい。

台風のドライブは、少し愉しみでもある。スピードを控えて気をつけて。

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