彼女と三人の男について

140728

彼女からLINEメッセージで誘いが届くと、それは「積もる話があるからそろそろ聞いてね」というサイン。

いつもの店で一杯のみながら待つのがお決まりだ。

「お待たせ」と笑顔でやってくる彼女は、いつも柔らかな素材の服を着こなし、健康的な色気をまとっている。

「どう?忙しい?」と定型的な話からスタートし、少しずつ彼女の舌が滑らかになる。前回のストーリーからの続きが語られ始める。

彼女には夫がいて、結婚して5年だか6年だかになる。体格がよく、優しく、常識をわきまえた「まっとうな」男性らしく、彼女は彼のことをとても信頼している。

一方、彼女には仕事で知り合った恋人がいる。線が細くて基本的には受け身のようで、でも実は「激しい気性の持ち主」だそうだ。いま、恋人と週に一度のペースで逢っていて、毎日のようにLINEでつながっているという。

加えて、彼女には数ヶ月前までわずかな期間だけつきあっていた男性がいる。京都とは離れた地方にある中小企業の社長だそうで、あまりに彼が多忙なため自然消滅的に別れてしまったのだそうだ。今なお仕事上つながっているそうで、「こないだも会った。つくづく彼が私の理想だと思う」とため息をつく。

このように書くと、彼女は恋多き女で色んな男性をもてあそんでけしからん女だと思われるかもしれない。

けれど、私はそうは思わない。彼女の話を聞いて、ひとつひとつの想いのヒダを知れば知るほど、人間とはなんと複雑な心を持っているのだろう、と思うからだ。

世の中には色々なルールがあり、法律から始まって一般常識、コミュニティのおきて、仕事上のモラルなど様々な縛りのなかで私たちは生きている。そうはいっても、人の精神を縛ることは難しい。いくら倫理に反することとはいえ、惚れてしまえばどうしようもないものだ。法律、知ったことか、と思うのが多くの恋する人の信条ではないだろうか。

彼女には、彼女だけの人生の物語があり、異性の求め方がある。

今の夫と二人で築き上げてきた生活。手に入れた穏やかでたしかな関係。子どもを作るかどうするか、といった悩みを持ちながらも、死ぬまで一緒にいたいという共通の希望。

一方で、仕事という夫の知らない世界で出会った優しく魅力的な彼。街で男性と互角に仕事で闘っている彼女を支え、魅力を讃え、性的に満足させてくれる彼。

さらに、ふとした弾みで出現する彼女の「真の理想の男性」。今も心を刺激されながらも、神様の皮肉か運命のはからいかによって継続できなかった人との思い出。

彼女は、その場その場で懸命に異性を愛している。それが出来るのは、彼女の才能であり、特性だと思う。

私は、同時に複数の異性を愛することが(経験上)できないので、彼女の話を聞くだけで、科学者から宇宙の不思議を聞いたり、スーパーカミオカンデの中身について教えてもらったりするのと同じぐらい、新鮮かつ不可解な思いを抱く。それがまた、私の楽しみでもある。

事実は小説より奇なり、という言葉のとおり、生身の人間の物語を聞くことこそ、何よりも面白い。

この年齢になってくると、知り合った人の物語を聞くことこそが贅沢だと思う。

40歳の人と出逢えばその人の40年間が、50歳の人と出逢えばその人の50年間というまるまるの物語について、知ることができる(その人が話してくれれば、という条件付きだが)。それは至上の時間だ。

彼女の異性との関係は、それぞれの相手との物語はどうなっていくのだろうか。

彼女の人生の目撃者として、物語の傍観者として、私はこれからもLINEメッセージを待ち続ける。

* * * *

(追記)
ここまで書いて、偶然にも上の話とドンピシャの面白い話にぶち当たりました。
休憩時間に職場の上司がやってきて、いつものように四方山話をしていたら、
「評論家の岡田斗司夫さんが、女には三人の彼氏がいれば良い、という説を提唱しているのよ。たとえば今の彼氏と、彼氏に足りないものを補ってくれる彼と、さらに趣味として理想的な彼(詳しい話はこちらのブログにあります)」
はあ〜。
私の友人は、岡田斗司夫氏の提唱する「彼氏三人理論」を地で実践しているのでした。
なるほど。人それぞれではあると思いますが、この理論が多くの女性を幸せにするのであれば、朗報ではありますね。
さてどうでしょう。

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