嵐山

140720

青柿が落ちた貴方と目が合った (詠み人 令子)

2014年夏の日曜日。ほぼ初めて本格的な嵐山観光を体験しました。

天龍寺、竹林の道、芭蕉ゆかりの落柿舎、化野念仏寺、トロッコ列車、保津川下り。さほど離れていない場所なのに、はるか遠くを旅したような不思議な感覚になりました。

とりわけ気に入ったのは、芭蕉の門人、向井去来の住まいだった落柿舎(らくししゃ)でした。

人で賑わう竹林の道から少し離れたところに佇む、小さく古ぼけた茅葺き屋根の庵は、風雅を愛で詩を紡ぎ出すのにふさわしい、つつましさと静けさがありました。青い実がついた柿の木の下で涼みながら、つい私も俳人になったつもりで、一句ひねったのでした。

トロッコにガタゴトと揺られ、初めて乗った保津川下りの舟でのひとときも印象的でした。

コンクリートの河岸より乗り込んだ簡素な舟は、味気ない船着き場からゆったりと進み始め、徐々に鬱蒼とした緑や樹々に囲まれた渓流へと下っていく。生き物のようにうねり弾ける水しぶきが乗客を濡らし、初老の船頭の言葉もギイギイというオールの音もどんどん饒舌になる。岩のてっぺんには孤高の白鷺が、涼しげなまなざしで遠くをみつめている。時折、櫂を漕ぐ手が止まると、辺りが静寂に包まれる。山の緑は様々な色をたたえて眼前にせまっては去って行く。気付けば、周囲の乗客の声も、客の笑いを取り続ける船頭の声も遠ざかり、現実とかけ離れたところにいるような、水の上をただ一人で滑っているような感覚に包まれる。ユートピア、という言葉が脳裏をよぎった…。

そんな非現実的な旅を体験した川下りも、クライマックスになり嵐山が近付くと、物売りの舟がやってきて、一気に俗世間の空気に包まれます。それもまた楽しく、つい誘惑にかられて注文した缶ビールがとても美味しかったのでした。

中京区の住まいから地下鉄、嵐電を乗り継いでわずか30分。どうしてもっと早くに来なかったのだろう、と不思議に思うほどでしたが、それもすべてはタイミングと縁なのかもしれません。今、この時期に、こうして新しい京都の魅力に出逢えたことを幸運に思います。

快適なコースを用意してくれた恩人に心から感謝しつつ、心地よい疲労感を抱きながらゆっくりと眠りたいと思います。

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